さて。
果たして師匠は、ウニは、なぜ変わったのだろう。
まず二人が出会ったのがウニ18・師匠22と仮定する。
数々のウニシリーズを読んで考えた自論を、以下に記す。
<その1・師匠の変化>
師匠が18の頃の話が、『貯水池』で語られている。
これを読む限り、18の頃の師匠はかなり初期のウニに近い事がわかる。
どこにでもいる、オカルトに興味はあるがまだ擦れてはいない、少し気弱で甘え上手な男。
そこに出てくる師匠の師匠・加奈子さんはウニと出合った頃の「俺」な師匠に近い。
師匠は、元々かなりウニに近かった。ちょっとだけ霊感のある、普通の大学生。
そこで出会った加奈子さんに感化され、師匠の性格や口調は少しづつ加奈子さんに近くなっていく。
それは年頃の人なら誰しもが一度は経験する「憧れの人の影響を受ける」程度のものであっただろう。
霊感も研ぎ澄まされ、場数を踏む事によって精神的にも大人になっていく。
私は、この時点ではまだ師匠は「俺」なウニくらいの人物ではなかっただろうか、と思う。
かなり大きなきっかけになったのは恐らく、加奈子さんの、死。
愛し尊敬する人を失って、彼女を求めるように、彼女の死によって開いた自分の心の穴を埋めるように…師匠は「俺」な師匠になっていったのではないだろうか。
加奈子さんが死んでから、ウニと師匠が出会うまでどれくらいの時間があったかは分からない。
けれど、「俺」な師匠は加奈子さんが死んでからウニに出会うまでの期間に作られたと推測する。
加奈子さんという人生の指針を失った師匠は、かなり色々無茶をしたと思う。
その結果が師匠にまとわりつく様々な『噂』や『逸話』になったのではないだろうか。
出会った頃の加奈子さんと同じ年になり、たまたま自分にも弟子が出来た。
師匠のウニを見る目は、かなり複雑なものであっただろう。
最初の頃は、昔の自分を懐かしく思いつつ、ウニの若さが微笑ましく。
そして出会って数ヶ月、『そうめん』事件が起こる。
ここではあえて、師匠に何が起こったかは考えないでおこうと思う。(また後日別口で考察予定)
そこで師匠は、それまでに築きあげてきた自分を、崩壊させてしまう。
ウニから見れば、それは「自分に近づいたのではないか」と思えるその性格や口調の変化。
だがそれはただ昔の、加奈子さんに会う前の師匠に戻っただけではないだろうか。
ここで一旦師匠は置いといて、ウニについて考えてみる。
<その2・ウニの変化>
ウニは、師匠にかなり近いながらも更にかなり人懐っこいイメージである。
先述の『そうめん』事件をきっかけに、師匠が頼りなくなってしまう。
頼れる師匠がいなくなったのを期に、ウニは精神的に成長したのではないだろうか。
ウニは師匠だけではなく、京介さんの影響も受けたであろう事が推測できる。
なのでウニは師匠よりもドライで客観的な性格になり、どこまで行っても師匠にはなりきれなかったのではないだろうか。
個人的にはウニの変化は、年相応なものの範囲から逸脱していないと思う。
大学という場所は、本当に人を変えてしまうものだから。
ただ、ウニの変化と同時期に、師匠が変化してしまっただけなのではないだろうか。
それを「師匠が自分に近づいているのではないか」と思い、また京介さんの言葉を受けて
「自分が師匠になってしまうのではないか」と危惧した。
でも、もしかしたら師匠はウニに、加奈子さんになってもらいたかったのかも知れない。とも思う。
以上が、私の「なぜ師匠とウニは互いに入れ替わるように変わっていったのか」という問いに対する考察です。
師匠シリーズがウニを通して見た世界なので、師匠の部分はかなり個人的主観が入りまくっていると思います。
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